一羽飼いのインコが無精卵を産むようになりました。
産卵後は毎回、とても疲れたような様子を見せ、心配です。
産卵をさせないためにも、発情抑制の方法を知りたいです。
目次
発情のサイン
鳥さんの発情のサインってご存知ですか?
鳥種や個体によってさまざまですが、よく見られる発情のサインを以下に挙げますね。
- 普段より攻撃的になる。
- 暗い場所や狭い場所へ好んで入り込もうとする。また、その場所へ巣材となるようなモノを持ち込む。
- 紙などをちぎる。
- 床やとまり木にじっくりと座る時間が長くなる。
- 普段と比べて大きめの糞をする。
- 餌の吐き戻しをする。
- お尻をスリスリと止まり木や飼い主の手などにこすり付ける。
過発情の危険性
人間の出産と同じように、鳥さんにとっても産卵は危険を伴う命がけの行為です。
ペア(つがい)での繁殖を考えていないのであれば、無駄な発情は避けましょう。
また、過発情(持続発情)によって発症する病気や症状もあります。
過発情によって引き起こされる主な病気(症状)
過発情によって引き起こされる主な病気をいくつか紹介します。
つまり、発情抑制をしっかりとおこなうことでこれから挙げる病気を発症させるリスクは減らすことが出来ます。
腹部ヘルニア症
鳥類のメスは体内で形成された卵による内臓の圧迫を防ぐために、腹筋を伸ばし広げる必要があります。
過剰な発情はホルモンに異常を招き、その腹筋を伸ばすコントロールが出来なくなり、腹筋が裂けてお腹の内容物が体外に脱出します(ヘルニアは車や自転車のタイヤからチューブが突き出してしまったような状態です)。
特にセキセイインコが発症しやすいようですが、オカメインコや文鳥においてもよく見られます。
鳥の手術の半分くらいはヘルニアが占めます。
過剰産卵
多産の傾向が強い小型の鳥を例として、野生下では1年間に数個〜10数個の卵を産みますが、環境ストレスがほぼない飼育下においては1年間に100個を超える卵を生む個体もあります。
過剰産卵はカルシウムの欠乏による骨粗しょう症からの骨折、タンパク質の欠乏による羽や嘴の状態悪化なども引き起こします。
治療の手段として、発情抑制剤が使われることもあるそうですが副作用の恐れもあり、出来るだけ栄養バランスの取れた食生活と発情を誘発しにくい環境をつくることが先決です。
卵詰まり
産卵されるべき卵が子宮部、膣部から出てこない状態のこと。
卵塞(らんそく)、難産とも呼ばれます。
ほとんどの鳥種では排卵後24時間以内に産卵されます。
個体差は多少ありますが、腹部の卵を触知(さわって確かめること)して24時間以内に産卵されなければ卵詰まりの可能性が高いです。
症状としては、元気がなくなる・羽を膨らます・食欲がない・イキんで声が漏れる・糞が出にくい、などです。
また、低カルシウム血症によって脚の麻痺を引き起こすこともあります。
卵詰まりが確認された場合は、すぐに鳥を診ることが出来る動物病院で受診をしてください。
受診が出来ない場合、自宅で出来ることは保温をすることくらいです。
飼い主の手で圧迫させて排卵を促したり、潤滑剤を塗ったり挿入する行為は非常に危険ですのでやめましょう。
発情抑制による予防の他にも、適切な栄養の摂取(カルシウム・ビタミンD)や充分な日光浴を与えることも予防として効果的です。
卵管脱
産卵時や産卵後など、卵管に炎症が残っているとイキみが続くことで卵管が脱出してしまいます。
症状としては、食欲がない・羽を膨らます・元気がない、など。患部(お尻から出ている赤いもの)を自分で咬んで出血させてしまうこともあります。
もし卵管脱になってしまった場合は早めの処置が必要です。
自作でも構いませんのでエリザベスカラーを取り付けてあげて自分で咬まないようにします。
また、綿棒を水や生理食塩水で濡らして飛び出した臓器を体内にやさしく押し込みます。
押し込むことが出来ないようでしたら、ガーゼなど刺激の少ない布を濡らして患部を包んであげてください。
これらの応急処置が済んだらすみやかに病院へ。
多骨性骨化過剰症
鳥は産卵前に卵殻をつくるためのカルシウムを骨に貯蔵させます。
この形成にはエストロゲンというホルモンが影響していると考えられています。
過発情になるとエストロゲンが減少することなくカルシウムが骨に沈着し続け、脚が麻痺したり、うまく飛べなくなってしまうことがあります。
セキセイインコによく見られる症状です。
精巣腫瘍(オスの場合)
精巣が腫瘍化する原因として考えられているのは、精巣が温められてしまうことです。
鳥類の精巣は体内にあり、発情期になると増大し他の臓器と密着してしまいます。
もともと鳥類は体温が高いため、発情期は特に精巣が高温にさらされます。
セキセイインコによくみられ、下記のように段階的に症状が進みます。
1.蝋膜(ろうまく)が発情期のメスのように褐色化していくなどメス化の兆候
2.精巣が肥大
3.精巣肥大による脚の麻痺、吐き気、食欲不振、腹部のふくらみ、呼吸障害
4.腹水が貯まる
腹水が貯まるようになると、体調が急変し死亡するケースもあります。
発情の要因と発情抑制について
発情を促すであろういくつかの要因とそれぞれの対応策、つまり発情抑制について解説します。
鳥さんとの接し方
発情する相手は鳥に限りません。飼い主などのヒトはもちろん、鏡やブランコなどのおもちゃに対しても発情(求愛)してしまいます。
発情しやすい子であれば、(とても寂しいことですが)手の中でナデナデするなど飼い主との過剰な接触はできるだけ避けましょう。
発情相手が鳥であれば、しばらく別々のケージに分けたり、放鳥時間をずらしたり。
モノに対して発情するようであれば、一時的にでもケージ内から撤去させましょう。
発情を促す場所やモノ
つぼ巣や巣箱、バードテント、またはそれらの代わりとなるような狭くて暗い場所(家具の隙間・服の袖口など)は発情を促します。
一時的にそれらを取り外したり、近寄れないようにしましょう。
ちなみに我が家では(繁殖は考えていないため)つぼ巣やバードテントは一切使用していません。
また、ケージ内の敷き紙などを器用にかじったりする子もいますが、これも発情行動のひとつです。
発情を抑制させたいのであれば、敷き紙を取り外すことをおすすめします。
日照時間
日照時間が長ければ長いほど発情を促しやすくなります。
ここで言う日照時間とは太陽が出ている時間というよりは、室内が明るい時間のことを指します。
夕方にはおやすみカバーなどの暗幕を掛けて完全に遮光し、物音なども無いような静かな部屋で12時間以上寝かせるのが理想です。
多くの鳥さんは、上記のように日照時間が長いほど発情しやすい『長日繁殖動物』と言われていますが、文鳥に関してはその逆で日照時間が短いほど発情しやすい『短日繁殖動物』と言われています。
温度
野生下の鳥たちの多くは気温の温かい時期になると繁殖活動が盛んになります。
飼育下においては、冬など寒い時期でも室内で暖房を使用することで鳥たちは年中発情をしてしまう可能性があります。
かと言って、暖房を切ってしまうのではなく過保護にならない程度にというイメージで空調をコントロールしてあげましょう。
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食事の与え方
鳥は雛を育てるために、十分な栄養(餌)を摂取しようとします。
餌がいつでも食べられる状態は発情を促す可能性があります。
対策としては、一日の餌を数回に分けて与えたり、一日に与える餌の総量を減らしたり、高カロリーなシード類を減らしたり。
そのためにも、太り過ぎていないか、食事制限で痩せ過ぎていないか、毎日の体重管理を怠らないようにしましょう。
今回は発情抑制について解説させて頂きました。
繁殖を考えていないのであれば、命がけの行為でもある産卵は出来れば避けたいところです。
過発情によって引き起こされるさまざまな病気は、命を落とす危険性もあります。
発情抑制のために・・・
- 過度な接触を避ける。
- こもってしまうような暗くて狭い場所を作らない。
- 日照時間(室内が明るい時間)を長くしすぎない。暗くて静かな環境で12時間以上寝かせるのが理想。
- 暖かいと繁殖活動が盛んになるため冬の保温はほどほどに。
- 餌がいつでも食べられる環境を作らない。毎日の体重管理は必須。
僕の個人的な意見ですが、鳥さんを飼育すること自体がとても不自然な行為だと思っています。
鳥さんにとって不自然なこの環境下でいかにして楽しく健康的な生活を提供できるか、命の危険にさらすような機会をいかに減らせるかということについて試行錯誤することが、飼い主にとっての最低限の思いやりではないかと考えています。
僕の願いはたったひとつ、とにかく長生きしてほしいのです。