前回の記事で紹介して頂いた『うちの鳥の老いじたく』を早速読ませてもらいました。我が家の9歳になるおじいちゃん文鳥とのこれからのバードライフについて、飼い主の私自身がどのような気持ちで臨めば良いのか、理解することができました。
それはよかったです。
前回の記事の最後でもお伝えしましたが、先日(2020年5月9日)『うちの鳥の老いじたく』の実践編という位置づけの続編『老鳥との暮らしかた』が刊行されました。
さっそく読ませて頂きましたので、こちらのレビューをお届けします。
目次
『うちの鳥の老いじたく』では、おもに「鳥の老い」とはなにか、どこをみて「老い」を知るのか、老いていく鳥に対して飼い主にできることはなにか。そして、お別れに対してどう臨むかといったことを解説しました。
老鳥との暮らしかた:「はじめに」より引用
本書では、老鳥の心と体の維持を中心に、環境の整え方やメンタルのケアなど、「老鳥との暮らし方」を考えていきます。中心となるテーマは、「老期の鳥が心穏やかに暮らすためのノウハウ」です。
我が家の文鳥、ラムネくんを撮影した最近の画像です。
先日8歳になりました。
一見、羽艶も良く見えますし、食欲も旺盛で元気ではあります。
しかし、毎日接していると小さな変化を感じてしまうことが多々あります。
数ヶ月前よりアイリングの赤色が若干薄くなってきたこと、昼間にウトウトする時間が増えたこと、僕の指を噛んだときに以前よりも痛みが少なくなったこと。
ラムネくんからの老いのシグナルが日々増えてきています。
今回レビューする『老鳥との暮らしかた』には、前作『うちの鳥の老いじたく』で学んだ「老鳥の特徴」や「飼い主としての心構え」を踏まえた上で、老鳥によりそう暮らしかたのより具体的な方法が提案されています。
ぼくは、おじいちゃんになることを悲しんだりはしないけど、体の変化には気付くし、自分でなんとか対応しようとするよ。
ひとしもちゃんと勉強して、おじいちゃんになるぼくをしっかりとサポートしてね!
前作『うちの鳥の老いじたく』を読まれて共感されたあなたにはぜひ読んで頂きたい続編です。
前作をまだ読まれていない方でも、この一冊で老鳥に対する接し方・考え方を深く学べますが、前作も併せてお読み頂くことをおすすめします。
僕がとくに気になってブックマークした箇所を7つ、紹介しますね。
(※章や節のタイトルは引用させて頂いております)
前作『うちの鳥の老いじたく』でも、鳥を長生きさせるために体重管理は重要であることが解説されていました。
老鳥期に入る前、餌に不自由しない飼い鳥特有の『肥満』という問題に飼い主は頭を悩まされます。
しかし、老鳥になると・・・
・食欲が落ちて体重が減少する
・健康と生命を維持するためにも体重減少に歯止めが必要
・若い頃から愛鳥の好物を把握しておくことが大事
だと解説されています。
なんらかの理由で体重を落とした老鳥が元の体重まで戻すのは至難であることも多く、より低いレベルにまでしか体重が戻らないこともあります。
老鳥との暮らしかた:1章より引用
飼い主さんは、ぼくたちの体重を若い頃から毎日把握する習慣を身につけてね。
この節では、老鳥の変化を把握する上で、日頃から飼い主が注意して観察しておくべきポイントが解説されています。
・かかとの位置などの体勢の変化
・目力(めぢから)などの顔つき、クチバシの異変、鼻づまりしていないか
・移動速度の低下
・飛んでいく位置:上に「飛ぶ」のではなく、「落ちる」ようになっていないか
・におい(体臭)の変化
毎日よく見ているからこそ気づける微妙な変化もあるということ。濃厚な時間の積み重ねは、ときに獣医師の目を超えます。
老鳥との暮らしかた:2章より引用
ぼくたちが飼い主さんをいつも観察をしているように、飼い主さんもぼくたちの日々の変化を感じ取ってくださいね。
冒頭にもすこしお話しましたが、我が家の文鳥ラムネくんは8歳。
最近は日中もケージの中でウトウトしていたり、放鳥中もお気に入りの止まり木の上で眠ってしまったり。
体重が落ちているわけでもなく、食欲もあり、フンの状態も良好、健康診断でも問題はなし。
それでもやはり、年を取ってきているんだな・・・と飼い主の僕は感じています。
この節では、
・換羽期に毎回酷使される『肝臓』の機能低下によって、鳥は体に疲労をためやすくなり、睡眠時間が長くなる
・放鳥中にもかかわらず、パタリと動きを止めて眠るようなことがあると要注意
と、睡眠の長時間化と老化に関する解説がされています。
老化によって肝機能の落ちた老鳥が感じる疲労感は、少し休むことで少しだけよくもなりますが、若いころのように元気溌剌(はつらつ)という状態には戻りません。それが「年をとる」ということです。
老鳥との暮らしかた:2章より引用
さいきん、疲れやすくなったよ。
ぼくが眠っているときは、しずかに寝かせておいてね。
老鳥になると握力が衰え、足裏に体重が偏ってかかるようになり、『趾瘤(しりゅう)』つまり「たこ」ができてしまう可能性がある、とこの節では解説されています。
さらには・・・
・趾瘤部分が化膿して痛みを発症した場合には、動物病院にて薬を処方してもらい、指導を受ける
・止まり木に伸縮テープを巻いたり、止まり木にいられなくなった場合はケージの床に工夫(タオルを敷くなど)をする
などの対処法が書かれています。
脚が膿んでしまうと、激痛が走るらしいっす・・・さすがのぼくでもそれだけは勘弁っす・・・
痛みをかばうような歩き方をしていないか、毎日観察しておきましょう。
鳥が衰えていく姿を冷静に受け止めて対処をしていく。
この節では、
・老鳥との暮らしにおいて心の『強さ』が必要
・もし、メンタルが弱いなら対処法を準備しておくことで、少しでも冷静に動揺を減らせる
と、解説されています。
僕は精神的にとてももろく、ちょっとした心配事でも気になってしまいます。
鳥たちの『老い』に関してだけでなく、『病気やケガ』に対しても事前に頭のなかで対処法を準備しておかなくてはいけませんね。
なにごとにも慌てない強いハートを持ってね。
そのためにも、わたしたちのことをよく知っておいてね。
小さな鳥にリハビリ? できるの? と思う方も多いことでしょう。結論からいうと可能です。ただし、すべての鳥に対して可能なわけではありません。
老鳥との暮らしかた:4章より引用
この本のなかで「そんな発想すらなかった・・・」と僕がいちばん驚き、著者の細川博昭先生の行動力と探究心に尊敬の念を抱いたのがこの4章です。
鳥のリハビリについての解説と検証がされています。
鳥に対してのリハビリは、
・羽ばたき
・歩行
・グリップ力
について、回復が期待されるとのことです。
細川博昭先生の専門は物理学だそうで、鳥の骨格標本に触れた経験はもちろん、愛鳥さんの関節の可動域などもヒナのころから把握してらっしゃったそうです。
また、(人間の)病院や老人保健施設への取材を重ね、人間のリハビリとの共通点がある鳥のリハビリについて、各分野の専門家と相談しプログラムづくりを計画されているとのこと。
実際に、細川先生の愛鳥さん(21歳のオカメインコ)で、リハビリプログラムを実施して、その手順をこの章では紹介しています。
その検証結果についての報告、現在の状況や反省点なども書かれてあり、とても興味深い内容でした。
近い将来、このようなリハビリプログラムが確立されれば、医師の許可のもと、僕たち一般の飼い主でもリハビリを施すことが出来るようになるかもしれませんね。
最後の5章では、老鳥に対する環境づくりについて具体的なケージ内のセッティング方法や、日光浴がおこなえない場合の紫外線ライトの活用法と注意点などが詳しく解説されています。
前作『うちの鳥の老いじたく』でも解説されていた『保温』に関しては、今回は老鳥や病鳥における緊急を要する保温について、『プラケース』はもちろん、『床面からの暖房』や『すのこ』を利用しての温度調節などが紹介されています。
まさにこの章で紹介される策は、前作『うちの鳥の老いじたく』の実践編そのものです。
ぼくたち老鳥は、寒さに対する感覚も鈍ってきているんだ。細川先生もおっしゃってるけど、老鳥には「ちょっと過保護かな?」というくらいで接してほしいな。ぼくたちはいつでも飼い主さんを頼りにしているよ!
鳥に関する飼育書は、ここ数年でだいぶ増えてきました。
鳥種を特定したものや病気に特化したもの、鳥の気持ちを知ることに重きを置いたもの、バードトレーニングのやり方、手作りおもちゃや食事の作り方・・・などなど。
しかし、『老鳥』に特化した内容の書籍は、2017年の秋に『うちの鳥の老いじたく』が発売されるまで、存在しませんでした。
こちらの書籍がどれくらいの販売部数を記録しつづけているのかは分かりませんが、僕の鳥友さんと飼育書の話になったときに、ほとんどの鳥友さんは所有していました。
しかも、愛鳥さんはまだ老鳥ではないのに。
前回の記事のまとめでもお話しましたが、『うちの鳥の老いじたく』と『老鳥との暮らしかた』は、これから鳥(雛や幼鳥・若鳥)をお迎えする方にこそ、一般的な飼育書とともにバードライフをスタートする時点でお読みいただきたいです。
かならず訪れるあなたの愛鳥の『老い』について、早くから準備しておいて無駄なことなど一切ありません。
個人的には、本書で紹介されている『鳥のリハビリ』についての細川先生の今後の検証にとても興味があります。
もしかしたら、細川先生自身の次回作なり雑誌の記事などで発表されるかもしれませんね。
その日を心待ちにしています。
『老鳥との暮らしかた』は、前作『うちの鳥の老いじたく』を読まれて老鳥に対する考え方に共感したり、ヒントを得たあなたにはぜひ読んで頂きたい続編です。
前作をまだ読まれていない方でも、この一冊で老鳥に対する接し方・考え方を深く学べますが、前作も併せてお読み頂くことをおすすめします。
あなたと愛鳥さんのバードライフがより良いものとなりますように!それでは、また。バードライフアドバイザーのかたやまひとしでした。
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