ウチのセキセインコは塩土(えんど)が大好きで、毎日喜んでガリガリとかじって食べています。
でも、先日SNSで「塩土はインコの健康に良くない」という投稿を見つけました。
怖くなってケージから塩土を取り出したのですが、セキセインコは塩土が食べられなくなったのがよほどストレスなのか、イライラしているようで可愛そうです。
塩土はインコの健康に良くないのでしょうか?
目次
塩土ってなに?
『塩土(えんど)』とは、赤土・塩・ボレー粉を硫酸カルシウム(石膏)で固めた鳥用の副食で、主にミネラル(ナトリウム・カリウム・カルシウム・リン・鉄 など)を補給するための飼料です。
運動量の過酷なレース鳩用の副食としても長年与えられています。
塩土は必要ありません(与えるデメリット)
飼い鳥にとって、塩土が副食として必要かどうか。
結論から先に申し上げますと、塩土は必要ありません。
塩土を与えて鳥さんが得られるであろうメリットよりも、健康を害するデメリットのほうがより強力であるからです。
塩土を摂取する3つのデメリットを解説しますね。
デメリット①:塩分の過剰摂取
私たち人間が料理に塩を加えて嗜好性を高めて食事を楽しむのと同じように、鳥たちも塩を好みます。
塩分の過剰な摂取は腎臓の機能に悪影響を与える可能性があります。
人間は摂取する塩分の量を自ら制限することができますが、鳥は摂取量を意識的にコントロールすることが出来ません。
目の前に『塩土』があれば、食べ続けてしまう危険性があります。
デメリット②:グリットインパクションの危険性
塩土を食べることで砂礫(されき:小石や砂)が砂嚢(さのう)と呼ばれる部位に蓄積されますが、過剰に摂取しすぎることでグリットインパクション(胃閉塞)を引き起こし、嘔吐してしまったり食欲が減退する危険性があります。
デメリット③:カビの発生
塩土は通常、ケージの中に設置します。
塩土自体は簡単に腐ったり傷んだりするものではありませんが、常時設置しておくことで、塩土にフンや水などが付着してそこからカビや雑菌が繁殖することがあります。
塩土を与えるメリット
しかしながら、長年ペットショップなどで販売されていたり、数年前の鳥の飼育書ではおすすめの副食として紹介されてきた塩土です。
塩土を摂取するメリットももちろんあります。主に次の3つです。
メリット①:ミネラル(主にカルシウム)の補給
塩土を摂取することで、塩分はもちろん、ミネラル(主にカルシウム)を補給することができます。
ただ、ペレット食がメインの鳥さんであれば、ミネラルなどは十分に摂取できています。
メリット②:消化を助ける
先に挙げたデメリットのひとつ『グリットインパクションの危険性』の中でも少し紹介しましたが、鳥には『砂嚢(さのう)』という部位があります。
鳥の胃には前胃と後胃のふたつがあり、砂嚢はそのひとつである後胃にあたります。筋胃(きんい)や砂肝とも呼ばれます。
鳥には歯が無いので、この砂嚢に含まれている砂礫(されき:小石や砂)で食べたものをすりつぶして消化を助けています。
塩土を摂取することで、砂嚢に砂礫を溜めることができると一般的には言われています。
しかし、『コンパニオンバードの病気百科』によると
砂嚢にはしばしば飲み込んだ砂礫(グリット)が滞留し、餌のすり潰しに役立ちます。グリットは殻をむかずに丸呑みする種類(キジ目、ハト目など)で重要ですが、そうでない種類では必ずしも重要ではありません。
コンパニオンバードの病気百科 より引用
と解説されており、インコなど飼い鳥の多くは塩土を摂取してまで砂礫を溜めなくても問題はないと考えられます。
メリット③ストレス発散とくちばしのメンテナンス
塩土は販売されているメーカーによって硬さがさまざまですが、ある程度の噛みごたえがあるため、カジカジとすることでストレス発散の効果があります。
また、ある程度の硬さがある塩土であれば、かじることでくちばしの形状のメンテナンスにも多少役立つかもしれません。
しかし、ストレスの発散方法は他にいくらでもありますし、塩土以外にも自然木素材のおもちゃをかじったり、殻付きのシードなどを日常的に食することで自然とくちばしは適度に削られるのではないか、と個人的には思います。
塩土を与えても良いケース
以上のことを踏まえて、これから新たに『塩土』を与えようとすることはおすすめしませんが、これまで日常的に塩土を与えていた場合は、突然取り上げてしまうと逆に急激なストレスを与えてしまう可能性もありますので、塩土を与える量を徐々に減らしていくことをおすすめします。
塩土を与える際の注意点は以下のとおりです。
- ケージ内に常時設置しない。
- 塩土まるごとではなく、一部を削ってごく少量を与える。
- フンなどで汚れた場合は細菌の繁殖を考慮し、汚れた部分は削って廃棄する。
まとめ
今回は、飼い鳥にとって『塩土』は不要であるという解説をさせて頂きました。
数年前までは当たり前だった飼育の常識が、何年後かには間違った飼育方法だった、ということはよくあります。
たとえば、最近では飼い鳥の主食は総合栄養食であるペレットが良いとされていますが、もしかすると数年後にはシードよりもペレットよりも栄養バランスが効率よく摂取できる餌が発見、開発されているかもしれません。
このような飼育の常識は、ネットや飼育本、鳥友さんからでももちろん得ることは出来ますが、いちばんは鳥を診ることができる動物病院にて獣医師から最新の情報やアドバイスをもらうことが大事です。
鳥さんをお迎えしたときはもちろん、定期的な検診を年に最低でも1回は受診して、鳥さんの健康維持はもちろん獣医師とコミュニケーションを取ることをおすすめします。
あなたと愛鳥さんのバードライフがより良いものとなりますように!
それでは、また。