こんな快晴の空に渦を巻くような雲。
その日、僕の心はこの雲のように揺れていました。
コーヒーを一杯飲んで気持ちを落ち着け、身支度を整え、出かけようとすると・・・
ラムネ
ひとし
ラムネ
そわそわしている僕を察した文鳥のラムネくんにクギを刺されたのです。
そう、僕はこれから浮気をします。
待ち合わせ場所は吉祥寺。
予約したお店に早く着いてしまいそうなので、井の頭公園へ。
僕の揺れる心は、こんなにきれいな桜の大樹を見てもざわつくばかり。
よくわからない子供のおもちゃの落とし物を見て、ちょっと感傷的になったり・・・
ふと見上げた青空と新緑でさえも、僕を責めているかのような気持ちになったり。
僕がこれから浮気することをカラスは絶対に見抜いていると思いました。
お店に到着してしまいました・・・
このお店には僕の浮気相手がいます。
しかもひとりではありません・・・
こんなにたくさんの・・・愛人、いや愛鳥ですね。
我が家に文鳥のラムネくん、オカメインコのポテトくん、サザナミインコのなすびくんという3羽のパートナーがいるにもかかわらず、僕は浮気をしているのです。
そもそも、浮気というものは犯罪なのでしょうか?
犯罪でないのならば、バレてしまわなければ・・・気持ちが我が家の愛鳥たちにいつも向いているのなら罪ではないのでしょうか。
自問自答を繰り返します。
僕にはこの問題が難しすぎて答えを導き出すことが出来ません。
ただただ、僕はたくさんの鳥たちを愛でたいだけなのです。
ふしだらな男だ!と罵ってもらっても構いません。
罵声を受け止めるだけの覚悟は十分に出来ています。
眺めていたい。
ただ、愛でたい。
人間・動物、性別の枠をこえて彼ら彼女らを愛してしまう・・・
いけないことなのでしょうか・・・
この子も・・・
この子たちも・・・皆可愛くて仕方がないのです。
ちなみにこのお店では、僕の浮気心をさらにくすぐる食事が提供されているのです。
本当にけしからんお店だと思いませんか?
愛でて愛でて・・・
壊してしまうほど、愛でました。
最後にこの子たちと密接にふれあい、名残惜しくお店をあとにしました。
井の頭公園に戻って、僕は自分の犯した罪と向き合っていました。
ふと、空を見上げるとさきほどの渦を巻いた雲はありませんでした。
快晴の青空が広がっていたのです。
僕は許されたということでしょうか。
きっと、僕はこれからもずっと浮気する。
帰ったらみんなに少しだけ謝ろうと思ったのです。
ひとし