最近セキセイインコを飼い始めて、毎日餌と水の交換はしていますが、ケージの外に出したことはほぼありません。
昔、おばあちゃんのお家でもケージの中の鳥たちを眺めているだけでしたから。
友だちに話すと「放鳥してあげないと可哀想だよ〜」と言われました。
放鳥ってなんですか?どうやってやるんですか?
昔は飼い鳥をあくまで観賞用のペットとしてケージの中のみで飼育をしていた方も多く、動物病院に連れていったり、温度管理に気を遣ったり、ということもなかったようです。
しかし、最近では飼い鳥に関しての飼育の常識が動物医療の観点からもアップデートされ、飼い鳥を心身ともに良好な状態で飼育しようとする風潮が高まっています。
今回は飼い鳥にとっての健康を維持するためにも必要な要素のひとつ『放鳥』について解説します。
目次
放鳥ってなに?
『放鳥(ほうちょう)』とは本来、下記のような場合に使われる言葉です。
①繁殖を目的として、鳥の雛を人工的に育ててから放すこと。
②繁殖・分布・生態などの調査のため、捕えた野鳥に目印をつけて放すこと。
三省堂 スーパー大辞林3.0 より
この記事で取り扱う『放鳥』とは、飼育下のインコなどの鳥を室内においてケージから放ち、自由にさせるという意味での『放鳥』を指します。
決して、飼い鳥を室外に放して自由にさせるという意味ではありません。
放鳥の必要性
ケージの中の鳥さんを「可愛いなぁ、可愛いなぁ・・・」と眺めているだけでは、鳥さんの心身の健康を維持することは難しいです。
ケージの中から室内に放って自由に遊んでもらう『放鳥タイム』を作ってあげましょう。
ここでは放鳥の必要性について解説させて頂きますね。
運動不足を解消
野生の鳥とは異なり、飼い鳥は採食行動(餌を探し求める)をする必要もなく、外敵から身を守るための緊張感がそれほどなくても生きていけるため、運動量が著しく少ないのは仕方がないことです。
運動不足によって鳥は人間と同様『肥満』な状態になり、動脈硬化や心疾患、肝疾患などのさまざまな病気にかかる危険性が高まります。
鳥の肥満の一番の要因は餌の食べすぎによるものですが、運動不足も少なからずその要因となります。
ケージの外で放鳥をさせて、自由に飛び回ったりぴょんぴょんと歩き回ったり、止まり木などのおもちゃを利用して身体を動かすことで、運動不足な状態から回避させてあげましょう。
ストレスを解消
私たち飼い主は、会社や学校など家を出た外の世界でさまざまな体験をし、自分のストレスをある程度はコントロールすることができます。
しかし、飼い鳥は飼い主のあなたがケージから出してあげない限り、狭いケージのなかで長い時間を過ごすことになります。
とてつもないストレスを感じることは容易に想像できると思います。
心にストレスを抱えることで、鳥は『毛引き』や『自咬(じこう)』という行為に及ぶことがあります。
『毛引き』はその名のとおり、自分で自分の羽根を引き抜く行為です。
『自咬』とは、毛引きがエスカレートして自分の皮膚までも傷つけてしまう行為です。
傷つけた部位によっては、多量の出血を引き起こす危険性もあります。
ケージの外で自由に遊んでもらうことで、鳥さんのストレスを軽減させてあげましょう。
健康チェック
放鳥タイムは、鳥さんの健康チェックもできる貴重な時間です。
もちろん、ケージの外からでも『元気かどうか』『フンの状態』『羽毛や身体に異常がないか』など、ある程度のチェックは行なえますが、『体重測定』や『爪切り』は放鳥中にしか行なえません。
また、毎日でなくても保定(鳥の身体を手で掴んで固定させること)をして、お腹などに変な膨らみなどがないか触って確かめたり、お尻が汚れていないか(いずれも何らかの疾患や抱卵が疑われます)観察してみてください。
異常や異変が見つかった場合は、すみやかに鳥を診ることができる動物病院で診察を受けましょう。
飼い主の癒やし
先に挙げた3つの項目は、鳥さん目線からの放鳥の必要性や大切さでした。
もうひとつ、放鳥には大切な要素というか『効果』があります。
鳥たちとの放鳥中のコミュニケーションによって、飼い主のあなた自身の心が癒やされて満たされるというものです。
鳥さんを利用するといえば言葉は適当ではないかもしれませんが、放鳥には飼い主のあなたの気持ちをリラックスさせたり、ストレスを軽減させたりするいわゆるアニマルセラピーの効果があると思います。
放鳥ってどんなことをすればいいの?
放鳥中には鳥さんにおもちゃなどで自由に遊んでもらうのはもちろん、飼い主のあなたとコミュニケーションを取ったり、遊びの延長のようなトレーニングなどをして時間を過ごします。
おもちゃで遊ぶ
部屋のなかで自由に飛んだり、あちらこちらをトコトコ、ぴょんぴょんと歩いたりするだけでも、鳥さんはきっと放鳥タイムを楽しむことはできるとは思います。
しかし、さらに鳥さん用のおもちゃなどを与えることで、放鳥中の遊びの幅はぐんと広がります。
鳥さんが自分自身でそのおもちゃの楽しみ方を考えて遊んだり、バードアスレチックで運動をしたりストレスを解消したり。
飼い主のあなたが声をかけても振り向いてくれないくらい(笑)鳥さんがおもちゃに集中して遊んでいる姿を眺めることができる放鳥タイムは、飼い主のあなたにとっても幸せな時間です。
我が家の鳥たちが喜んで遊んでいる鳥さん用のおもちゃをいくつか紹介しますね。
ただ、鳥さんとおもちゃにはある程度相性があります。
せっかく買ってきたおもちゃよりも、丸めたティッシュや飼い主さんのメガネ、綿棒などの方を好む鳥さんもいます(笑)
長く一緒に暮らしていると、だんだんとその子の好みの傾向も分かるようになります。喜んでくれそうなおもちゃを探すのも飼い主さんの楽しみのひとつになりますよ。
また、おもちゃを手作りしてみるのも楽しいものです。
我が家では、物干しに少し手を加えて手作りバードアスレチックも作ってみました。
以前、このバードアスレチックの作り方も記事として投稿しておりますので、そちらもぜひ参考になさってください。
飼い主とふれあう
鳥は本来、群れをなして生活をする生き物です。
毎日顔を合わせている飼い主のあなたのことは、同じ群れの仲間もしくはパートナーとして本能的に認識している可能性が高いです。
ですので、放鳥タイムは鳥さんにとって仲間である飼い主のあなたをより近くに感じ、安心することできる貴重なふれあいの時間でもあります。
直接あなたの手に乗ったり、肩にとまってくつろいだり。
また、おしゃべりや歌が得意なセキセイインコやオカメインコなどの男の子なら、目と目を合わせて新しい言葉や歌を教えるのも良いでしょう。
ただ、鳥さんによって、もしくはそのときの気分によって、あなたの方へは近づかず、自分ひとりの時間を過ごしたり、止まり木などでじっとたたずんでいるということもあります。
そのような雰囲気をかもしだしているときは、無理に近づいてコミュニケーションを取ろうとはせず、鳥さんの過ごしたいスタイルを尊重してあげましょう。
クリッカートレーニング
あなたはこんな経験ありませんか?
- 体重をはかりたいのに、なかなか体重計に乗ってくれない
- 手乗りになってもらいたいのに、指を怖がってしまう
- せっかく買ってきたおもちゃを怖がってしまって遊んでくれない
- 病院へ行く時間が近づいているのに、キャリーケージに入ってくれない
飼い主さんが鳥さんに望む行動を言葉で伝えて意思疎通できれば、これらのことに困ることはないのですが、そういうわけにもいきません。
クリッカートレーニングという手法を使えば、鳥さんとコミュニケーションを取りながら楽しみつつ、飼い主さんの望む行動を鳥さんに促し、実際にその行動ができるようにもなります。
詳しいトレーニングのやり方は、下記の記事を参考にしてみてくださいね。
フン対策
放鳥時の困りごとのひとつとして、鳥さんの『フン』問題があります。
鳥は外敵から身を守るため、瞬時に飛ぶことができるように常に少しでも身を軽くしようと、頻繁にフンをします。
すでに鳥さんと暮らしてらっしゃる飼い主さんはご存知だとは思いますが、シードやペレットが主食である鳥さんのフンは、産卵の時期を控えていたり何らかの疾患を抱えていないかぎりは、ほとんど匂いは感じられません。
とはいえ、あちらこちらにフンをするので、布製品にシミができてしまったり、飼い主さんの洋服や頭の上などにポトリと落としたり。。。
大型の鳥さんであれば、もしかするとトレーニング次第ではフンをしてもらう場所などを教えることができるかもしれませんが、ほとんどの鳥さんの場合、放鳥中至るところに自分のタイミングでフンを落とします。
毎日鳥さんと接していると「あ、今からフンをするな」というタイミングは、鳥さんのわずかに「りきむ」仕草で分かるようにはなります。
しかし、その0.5秒後くらいにはフンを出しますので、よほどの瞬発力でもない限り瞬時に鳥さんのお尻の下に手などを差し出してフンをキャッチするということは至難の技です。
ですので、フンをいろいろなところに落とされるのは仕方ないとして、フンが落ちたあとにいかに早くそのフンを処理するかということが重要になってきます。
我が家では、上記の画像のような通称『うんこ缶』にティッシュを詰めておき、放鳥中はいつでもフンの処理ができるようにしています。
(※少しでも節約したいので、1枚のティッシュを6等分にちぎっています)
放鳥は何時間すればいいの?
『放鳥は◯時間しなければならない』という決まりはありません。
飼い主さんのライフスタイルによっても、放鳥ができる時間は変わってくると思います。
ちなみに我が家では、ちゃんと時間を取っての放鳥は1日30分〜1時間程度です。
それ以外には朝と夜のケージ掃除のときに、数分ケージの外に出てもらうくらいです。
「ケージの中にずっと居ては可愛そう・・・」という気持ちもわかりますし、室内とはいえ自由に遊べる時間が長ければ長いほど、鳥さんにとっても幸せなことかもしれません。
しかし、個人的には放鳥タイムが長いということが必ずしも良いことばかりだとは思いません。
鳥さんとの生活が長くなると、放鳥をさせながら飼い主さんはいろいろなことが出来てしまうようになります。
テレビを見ながら、ゲームをしながら、読書をしながら、料理をしながら。
慣れとは怖いものです。
自分は大丈夫だと思っていても『ながら放鳥』には多くの危険が潜んでいます。
僕が鳥さんの飼育において、一番に心がけていることは『死なせない』ということです。
原因が不明の突然死など防ぎきれない死もありますが、病気などは定期的に病院へ行くことである程度は予防することも可能です。
同じように、飼育下における『事故死』は防ぐことができます。
放鳥中に不注意で鳥さんを踏んでしまう、閉じようとしたドアに挟んでしまう、うたた寝をしてしまっていつのまにか鳥さんを圧迫死させてしまうなど。
うっかり開けてしまった窓から鳥さんを逃してしまうこともあります。
迷子になった鳥さんは高い確率で保護されず、野生で生きるすべを知らないので、餓死または他の生き物によって襲われてしまうという結果になることが多いです。
もちろん、「迷子」イコール「死」ではありませんし、もし迷子にさせてしまったらできる限りの手段を用いて捜索をするとは思いますが、現実的には少なくとも飼い主さんの元に戻ってくる確率は極めて低いです。
放鳥タイムは出来るだけ、鳥さんへの意識が薄れないように、また飼い主さんの集中力が途切れないくらいの時間内におさめることをおすすめします。
さいごに
放鳥は毎日してあげましょう。
鳥さんはケージの外に出ることはもちろんですが、飼い主のあなたのそばに近づけることも楽しみに日々を過ごしています。
ケージに目をやると、だいたい鳥さんと目が合うでしょう?
鳥さんはいつも飼い主のあなたを気にしています。
雛でお迎えした頃や、だんだんとあなたをパートナーとして認めてくれて懐いてきてしょうがなかった頃は毎日喜んで放鳥の時間を取っていたのに、いつからか自分の生活の忙しさを理由に、もしくは鳥さんがあまり懐かなくなってしまったことが原因で、放鳥の時間が短くなったり放鳥しない日が増えてきたり。
そんなことはありませんか?正直に言えば、僕にも多少なりともそんな時期がありました。とても反省しています。
時間的に余裕がなければ、ほんの10分でも構いません。
毎日の放鳥タイムで鳥さんとコミュニケーションを取ってくださいね。
あなたと愛鳥さんのバードライフがより良いものとなりますように!
それでは、また。
バードライフアドバイザーのかたやまひとしでした。
(※この記事はYouTubeにて動画でも解説させて頂いております)