『鳥くさいどっとこむ』のかたやまひとしです。
みなさんは、『5つの自由』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ご存知の方は、『アニマルウェルフェア』いわゆる『動物福祉』について、関心がある、もしくは勉強をされたことがある方ではないでしょうか。
今回は『愛鳥に必要な5つの自由』というテーマで、解説をさせていただきます。
目次
『5つの自由』とは
『5つの自由』というのは、1960年代のイギリスにおいて、動物福祉の観点から家畜動物の飼育環境を改善させるために提唱された理念のことです。
①飢えと乾きからの自由
②不快からの自由
③痛み・負傷・病気からの自由
④本来の行動がとれる自由
⑤恐怖・抑圧からの自由
現在では、家畜動物だけでなく、飼育下にあるすべての『飼育動物』・・・たとえば『愛玩動物(ペット)』や、人間の医療などの研究や開発をすすめるにあたって、その尊い命を犠牲にして貢献をしてもらう『実験動物』。
また、動物園などの『展示動物』や、盲導犬など人間の補助をおこなう『使役動物』なども『飼育動物』に含まれます。
これらすべての『飼育動物』ができるだけ快適に過ごせるように、私たち人間はいま挙げた『5つの自由』を与える責任があるよね、工夫をすべきだよね、ということです。
『愛鳥に必要な5つの自由』という観点から、『5つの自由』をひとつずつ解説をしていきますね。
①飢えと乾きからの自由
飼い鳥さんには、十分な栄養が摂取できる『食餌』と新鮮な『水』を与えましょう。
ここでは、飼い鳥さんにとっての『食餌』について解説をしますね。
飼い鳥さんの主食には大きく分けて『シード』と『ペレット』、2つの『食餌』があります。
『アワ(粟)』『キビ(黍)』『ヒエ(稗)』などの植物の種子、いわゆる『シード』とよばれるもの。
『シード』は、野生の鳥さんが自然界で常日頃から食べているということもあり、飼い鳥さんにとっても、非常に食いつきが良く、殻をむいて食べるという楽しみもあります。
ただ、脂質が高い『シード』があったり、ミックスシードと呼ばれる数種類のシードが配合された商品ですと、鳥さんが選り好みをして食べることがあり、栄養のバランスが偏る可能性もあります。
そして、もうひとつ。
総合栄養食と呼ばれる『ペレット』。
ワンちゃんのドッグフード、猫ちゃんのキャットフードのような人工飼料のことです。
『ペレット』は、栄養学に基づいて研究され、製造されていますので、食べてさえくれれば鳥さんに必要とされる栄養をバランスよく摂取できます。
ただ、味が淡白で、なかなか鳥さんが食べてくれなくて困っている・・・という飼い主さんも多いです。
ですので、主食が『シード』の場合は、『シード』だけでは摂取しにくい栄養成分、たとえばビタミンやミネラルなど、これらを補う栄養補助食品(いわゆるサプリメント)を併せて与えることをおすすめします。
また、『野菜』を副食として与えることもおすすめします。
『シード』が主食の場合、『野菜』は不足しがちなビタミンなどを補助してくれますし、『ペレット』が主食の場合でも、ムシャムシャ・パリパリと噛みちぎるという楽しみを感じることができます。
当たり前ですが、鳥さんが毎日の『食餌』メニューを決めたり、選んだりすることはできません。
飼い主のあなたは、飼育書やネット、かかりつけの獣医師に相談するのはもちろん、愛鳥さんを日々観察するなどして、その子に合った『食餌』を見つけ出してあげましょう。
②不快からの自由
飼い鳥さんが不快に感じることのない快適な環境のもとで、飼育をおこないましょう。
たとえば、『快適な温度』、糞や食べ残しにまみれていない『清潔なケージ』。
ここでは、飼い鳥さんにとっての快適な『温度』について解説をしますね。
飼育下における鳥さんは、一般的には寒さに弱いと言われています。
特に初めての冬を迎える幼鳥さん、あるいは老鳥さん、病気を患っている鳥さんは寒さはもちろん急激な寒暖の差に弱いです。
エアコンでの室温調整を基本として、補助的にケージ周辺の温度を上昇させる小動物用のヒーターなども併用すると良いでしょう。
また、夏の暑さについても注意は必要です。
室内の温度が上昇しすぎることによって、鳥さんも人間と同じように熱中症のような症状に陥ることがあります。
鳥さんが口をパクパクさせて苦しそうに呼吸をしていたり、翼を広げるしぐさを繰り返したり。
このような体温調節を頻繁におこなっているときは要注意です。
鳥さんが快適に暮らすことができる室内の適温は、年齢や健康状態によって異なります。
あくまで目安ではありますが、下の表を参考に愛鳥さんの様子を観察しながら室温調整をおこなってください。
ただ、健康状態が良好な大人の鳥さん、成鳥さんについては、安定しすぎた温度環境に慣れてしまうことで、鳥さんが本来持っている体温調整の機能が低下してしまう可能性があります。
飼い主さんによる室温の調整と季節本来の温度変化を感じてもらうこと。
バランスの良い室内の温度管理を心がけましょう。
③痛み・負傷・病気からの自由
飼い鳥さんに怪我を負わせたりしないような危機管理、病気にならないような健康管理をおこないましょう。
たとえば、『不慮の事故を防ぐために、ながら放鳥をしない』『具合を悪そうにしていないか観察をする』『毎日の体重チェック・体重管理』『不要な産卵を防ぐための発情対策』、そして『体調不良時や怪我を負った際の適切な治療』と『定期的な動物病院への通院』など。
当たり前ですが、鳥さんは『言葉』によって、痛みや不調を飼い主さんに伝えることはできません。
また、僕たちも鳥さんの『言葉による訴え』を理解することは困難です。
ここでは、『定期的な通院』の重要性について、解説をします。
- 健康状態を把握できる。
- 病気を早い段階で見つけることができる。
- 外出・移動・病院での診察に慣れることができる。
- 獣医師からのアドバイスや知識を得ることができる。
- 獣医師が鳥さんと飼い主さんの特徴を把握でき、適切なアドバイスができるようになる。
とくに最後に挙げた獣医師側のメリットが、僕はとても重要だと思っています。
もちろん、診てもらうのは愛鳥さんですが、診断結果を共有するのは獣医師と飼い主です。
お互い人間ですので、相性もありますが、獣医師は飼い主さんの飼育方針や性格などもある程度把握しておいたほうが、より適切なアドバイスができると思います。
もちろん、僕たち飼い主としても、獣医師の治療方針や性格を把握しておくことで、愛鳥さんの症状を的確に伝えることができたり、対等に相談がしやすくなります。
ちなみに我が家の鳥さんたちは、年に3回の定期健康診断を受診しています。
4羽いるので、毎月1羽ずつ、結果的に僕自身は毎月獣医師と顔を合わせることにもなります。
定期健康診断では、我が家の鳥さんたちの場合、『視診』『触診』『聴診』『糞便検査』『体重測定』『爪切り』これらの項目を毎回お願いしています。
その日診てもらう鳥さんの相談はもちろん、他にも飼育や病気に関する質問があったり、他の鳥さんたちのことでも気になることがあれば、相談をしています。
お住まいの地域によっては、鳥さんを専門的に、もしくはしっかりと診ることができる病院がなかったりすると思います。
できれば、お迎え前に通院可能な範囲に鳥さんを診ることができる動物病院があるかどうか、探しておくことをおすすめします。
最低限、その動物病院にて『そのう検査』をすることが可能かどうか、ここがしっかりと鳥さんを診ることができるかどうかの判断基準となります。
ネット検索だけでなく、実際に動物病院に電話で問い合わせをしてみましょう。
④本来の行動がとれる自由
飼い鳥さんが、鳥本来の習性や本能に準じた行動ができるような環境を整えましょう。
たとえば、『鳥さんのサイズに適した広さのケージを用意する』『ケージの中でも放鳥時でも退屈をさせない』など。
後者について、すこし解説をします。
野生の鳥さんと違って、飼い鳥さんは外敵から狙われることもなく、また餌を探し回らなくても飼い主さんが毎日餌や水を与えてくれます。
とても安全で安心なこのような生活環境は、幸せでもあり、ときに不幸でもあります。
私たち人間同様、何もしない時間がたくさんあるということは、とても退屈ですし、ストレスを抱える原因にもなります。
飼い鳥さんがストレスを感じ続けてしまうと、鳥さんが自分で自分の羽根を抜いてしまう、いわゆる『毛引き』という行動を取ってしまうことがあります。
さらに『毛引き』がエスカレートすると、『自咬』という自分の皮膚までも傷つける行動に至ってしまい、皮膚からの出血を引き起こす危険性もあります。
そこで、『退屈』から発生するストレスを与えないために、穏やかすぎる日々の生活の中にちょっとした刺激を与えてあげましょう。
いつでも満足に食べられるように『食餌』を用意するだけでなく、鳥さん自身が餌を探したり、工夫しないと食べられないようにしたり。
いわゆる『採食行動』を促すような食餌環境をつくることで、食にありつける楽しみを感じてもらうことができます。
採食行動、英語で『フォージング』。
鳥さんのおもちゃのなかには、『フォージングトイ』と呼ばれるものもあります。
なんらかの容器などに入った餌を、鳥さんが考えて、工夫して、容器の中から餌を取り出すというおもちゃです。
このような『フォージングトイ』を、ケージの内外で活用するのも良いでしょう。
もちろん、『フォージングトイ』でなくても、ブランコやはしごのようなおもちゃや、バードアスレチックと呼ばれる鳥さんの遊び場なども、『退屈』を解消するのに有効なツール、手段だと言えます。
他にも、これは個体差がありますが、他の鳥さんと同時飼育することが『退屈』を解消したり、群れを作って生活している野生の鳥さんのような、鳥さん本来の生活環境に少しでも近づけることができるかもしれません。
⑤恐怖・抑圧からの自由
飼い鳥さんに、精神的な苦痛や恐怖心を与えないように心がけましょう。
飼い鳥さんが感じる『恐怖』とはどのようなものがあるのでしょうか。
たとえば、いっしょに生活をしている他の鳥さんや、犬や猫など違う種類の動物に対しての恐怖心が芽生えることもありますし、なにかしらのきっかけで僕たち飼い主に対して恐怖心を覚えてしまうこともあります。
また、『恐怖』とは少し異なるかもしれませんが、突然の環境の変化に対して、すぐに対応ができずに食欲を落としてしまったり、先ほども挙げましたが『毛引き』を始めてしまうこともあります。
突然の環境変化とは、『新しい鳥さんのお迎え』『飼い主の引っ越し(室内の様子が変わる)』『ケージの新調』『ペットホテルに預けられる』など、です。
これらは、鳥さんとの生活において、避けては通れない環境の変化でもあります。
ただ、それぞれストレスを軽減させる対処法はありますので、また今後改めてYouTube動画やブログ『鳥くさいどっとこむ』の記事として解説をしたいと思います。
まとめ
動物福祉の観点から、動物の飼育環境を改善させるために提唱された『5つの自由』について、愛鳥さんとの暮らしと照らし合わせて、解説をさせていただきました。
いまいちど、『5つの自由』を確認してみましょう。
①飢えと乾きからの自由
②不快からの自由
③痛み・負傷・病気からの自由
④本来の行動がとれる自由
⑤恐怖・抑圧からの自由
鳥さんと暮らす、鳥さんを飼育するということは、ひとつの『かけがえのない命』をあずかるということです。
飼育されるために産まれてきた命かもしれません。
しかし、僕たち人間と同じように鳥さんも、身体的・精神的に痛みを感じ、喜びも感じる感情を持った動物です。